断崖絶壁に咲く早春の花「越前水仙」
日本海に面する福井県の越前海岸は、日本海の荒波が長い年月をかけて造り上げた断崖絶壁の地形が特徴です。特に、自然が造り出した景勝地「呼鳥門」付近の岩場は、奇岩と迫力のある断崖絶壁が続きます。私の若い頃は、この呼鳥門を国道が通り抜けており、岩でできた自然のトンネルをくぐることが出来て、知る人ぞ知るドライブスポットでした。
また、ここは、大小の奇岩が続く景観だけでなく、冬にしか見ることのできない「越前水仙」の大群生があることでも有名です。越前海岸の「越前水仙」は、千葉県の房総半島、兵庫県の淡路島とともに日本水仙三大群生地の一つで、冬の間は海岸沿いの山の斜面に白い可憐な越前水仙が咲き乱れます。今回は、越前海岸特有の急峻な斜面地に咲く水仙をドローンで空撮しました。
ネットで調べてみると、水仙の栽培が始まったのは大正10年頃。もともと自生していた水仙を他県の生花市場に出荷したことがきっかけで、今では越前海岸に約70ヘクタールと日本一の栽培面積を誇るまでになったとの記載がありました。斜面に自生する水仙を正月花として摘花・販売することを冬の副業とし営まれてきたそうです。今では、白い花々が一面に咲く景色は福井を代表する文化的景観と言われています。
厳冬の日本海を背景に可憐に咲く越前水仙は、福井の冬の風物詩の一つであり、私は毎年この地を訪れています。例年の様に水仙ランドを目当てに行ったのですが、予想していた水仙ランド付近の混雑は皆無で、無料開放との看板も設置されていました。疑問に思いつつ、急な坂道を車で登っていくと、その道中に咲き誇っている水仙の花がないことに気が付きました。
その原因は獣害により花が咲かない状況となっていたのです。シカなどが水仙の葉を食べつくすことにより、球根に十分な養分が蓄えられなくなるため、花が咲かないのです。水仙の花までもが、獣害の被害を受けていることに、腹を立てつつその場所を移動し、何とか咲いている場所を探しドローンで空撮した映像が、今回投稿する映像です。
私の身近な獣害の被害として、わが故郷の彼岸花も、昨年末から早春にかけて獣害の被害にあいました。いまや10万本の花が咲き、秋の風物詩として定着しつつある「徳山彼岸花ロード」の葉っぱを鹿が食い荒らしたのです。彼岸花は冬場に緑色の葉を茂らせているのですが、その葉がなくなっているのです。(投稿写真を見比べてください。)
今年は雪が多かったため、鹿の食べ物がなく、里に下りてきて緑の彼岸花の葉を食べてしまったのです。あまりにもひどい状況で、今年の彼岸花の花付きは悪くなり、花が咲かない区間も生じる心配があります。それにしても、毒のある葉でも食べてしまう鹿の生命力は凄いです。近場で起きた越前と同じような花の被害に怒りと近親感を覚えつつ、急な斜面で鹿が寄り付かない場所に咲く水仙を探し求めて、空撮した映像は如何でしょうか。